令和4年10月11日、次の二冊を読み終えた。
1.宮城谷昌光著/太公望 下(文藝春秋、2014年、電子書籍版)
2.笹沢左保著/あれはブローニュの森(集英社、1988年)
〈感想、メモ〉
1.宮城谷昌光著/太公望 下(文藝春秋、2014年、電子書籍版)
上・中・下巻から成る太公望の小説を読み終えた。今回読了した下巻においても幻想的な場面があり、非常に面白く感じた。非現実的、非科学的なシーンを描くことで物語の緊張感が失われるようなケースもあると思うのだが、このシリーズでは幻想的な場面はむしろ良いアクセントとなっているように感じられた。
望(後の太公望呂尚)、太子発(のちの武王)、小子旦(後の周公旦)、受王(紂王)らが登場する。伯夷にまつわるエピソードも語られる。
「斉の邦」という章の最初の部分では、「組織としての軍(本文内の表現)」を望がつくった事について書かれている。望が旅や師という軍における単位をつくったとあり、面白く思う。
以下、目次から章のタイトルを「」内に引用する。「高貴な囚人」、「西方の風」、「機略」、「西伯」、「征伐」、「周と召」、「周召同盟」、「決戦」、「斉の邦」、引用終わり。
〈宮城谷昌光の『太公望』関連記事〉
ほか、受王により囚われの身となった周公(西伯)が、「(以下引用)易(八卦)における占いのことばをさだめた(引用終わり)」という伝説を司馬遷がどこかで採取し、それが『史記』の記述となっているのだろうという考えが記されており、記憶に残る。
〈関連記事 易と周公の伝説が紹介される金谷治の著作『易の話』(講談社)を読んだ記録〉
〈関連記事 武王の登場する酒井照空の著作『至誠 周公旦の人間像』(文芸社、1999年)を読んだ記録を含む記事〉
2.笹沢左保著/あれはブローニュの森(集英社、1988年)
『あれはブローニュの森』は年齢差のある男女の欧州の旅を描いた小説。食糧難について交わされる会話が興味深かった。男性が昭和一桁の世代なのだが、食糧難と言った場合、それは自給自足にも略奪を受ける危険性があるという認識なのである。このような状況を想像しうる力というものは環境によっては全く育たないであろう。
(敬称略)
(『太公望 下』はiPhone(Apple社)のVoiceOver機能を用いて聴きました。その際の読み方の設定を行うにあたってはサピエ図書館の点字データを参考にさせていただきました。また、『あれはブローニュの森』は同図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
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