令和4年5月23日、以下の3冊を読み終えた。
1.長谷部恭男著/憲法の良識 「国のかたち」を壊さない仕組み(朝日新聞出版、2018年)
2.ヘルマン・ヘッセ著、高橋健二訳/デミアン(新潮社、1996年)
3.R・F・ヴァイツゼッカー著、永井清彦訳/荒れ野の40年 R・F・ヴァイツゼッカー大統領演説(岩波書店、1998年)
〈感想、メモ〉
1.長谷部恭男著/憲法の良識 「国のかたち」を壊さない仕組み(朝日新聞出版、2018年)
『憲法の良識 「国のかたち」を壊さない仕組み』には2012年の自民党による憲法改正草案に対する著者の考えや著者の学生時代のエピソードなどが語られている。第4章は「緊急事態条項」についての章であり、興味深く読んだ。
第4章の「法の支配の限界」の中で、アルバート・ヴェン・ダイシー(Albert Ven Dicey,1835~1922)の言うイギリスの憲法の三つの特徴が紹介される。(1)国会主権、(2)法の支配、(3)憲法習律の三つである。この中で、(2)の法の支配について著者は注意を促す。ダイシーが「既存の法(本文中の表現)」外の出来事は必ず起こるものなのだと言っているとのことで、法として書かれていない状況に政府がとるべき態度が述べられていて、興味深く読んだ。
2.ヘルマン・ヘッセ著、高橋健二訳/デミアン(新潮社、1996年)
『デミアン』はヘッセの幻想的な小説。面白い。巻末に高橋健二の解説あり。この解説の中で訳者は本作を「(以下引用)力作であると同時に問題の作である(引用終わり)」としている。
解説によると、本作は大戦後の1919年発表の作品であり(書き上げられたのは1917年だったが)、『青春は麗し』(1916)と『クリングゾルの最後の夏』(1920)の間に位置するものであるようだ。
物語は語り手であるシンクレールの少年時代に通っていたラテン語学校における話から始まる。シンクレールがある問題を抱えている頃、マックス・デミアンという少年がラテン語学校に現れる。他の少年とは異なる雰囲気を持つデミアンと語り手は親しくなっていく。
印象的だった点二つ。(一)デミアンとシンクレールが聖書のカインの物語について語り合う場面。この会話の登場する章の最後において、シンクレールの父親がカインを正しいとする考え方などに近寄らぬよう語り手に戒める。(二)語り手が「アプラクサス」の名を含む文章の書かれた紙を本の中に発見する場面(第五章)。
3.R・F・ヴァイツゼッカー著、永井清彦訳/荒れ野の40年 R・F・ヴァイツゼッカー大統領演説(岩波書店、1998年)
『荒れ野の40年 R・F・ヴァイツゼッカー大統領演説』は、当時の西ドイツの大統領であるリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカーの1985年5月8日に連邦議会で行った演説の全文。
リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー(Richard von Weizsacker)は1920年にシュトゥットガルトに生まれる。1984年に西ドイツの大統領に就任。85年の秋には西ドイツの元首として初めてイスラエルに訪問している。
(敬称略)
(上の三冊はサピエ図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
(上の画像はPlaygroundにより生成されました。令和六年八月十六日加筆)
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