以下の5冊は2022年2月18日から20日までの期間に読み終えた本である
1.坂口安吾著、松尾清貴現代語訳・解説/堕落論(理論社、2015年)
2.佐藤優著/人間の叡智(文藝春秋、2012年)
3.円地文子著/円地文子の源氏物語 巻一(集英社、1985年)
4.森田たま/もめん随筆(新潮社)
5.一橋文哉著/闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相(新潮社、1996年)
〈感想、メモ〉
1.坂口安吾著、松尾清貴現代語訳・解説/堕落論(理論社、2015年)
「堕落論」、「続堕落論」、「日本文化私観」、「FARCEに就て」、「風博士」が収録される。
「日本文化私観」は、ブルーノ・タウトの言葉に反応する形で書き始められる。この部分、考えさせられる。この「日本文化私観」で著者は丹波の亀岡を訪れる。著者が大本教の教団施設跡を訪れる場面が印象的であった。
2.佐藤優著/人間の叡智(文藝春秋、2012年)
この本においては「新・帝国主義」という概念が用いられる。著者の定める新旧いずれの帝国主義も、(以下引用)「食うか、食われるか」の弱肉強食を原理とする(引用終わり)ということにおいては同様のものであるようだ。
再読。今回は著者の友人サーシャのエピソードが面白く感じられた。
ほか、興味深く読んだ点二つ。(一)実念論の重要性を著者が指摘している点。(二)ブーバーの『われと汝』(1923年)における根源語の話が重要であることを記す部分。
3.円地文子著/円地文子の源氏物語 巻一(集英社、1985年)
以下、印象に残ったエピソード。(一)「末摘花」。貴族の社会において要求される教養や機知の基準の高さに大変だな、などと余計なことを考えながら読んだ。(二)「花散里」。このエピソードでの風景の描写の美しさも印象的だった。特に長々と説明的な文章が置かれているわけではないが、橘の庭はいかにも美しそうだと想像した。(三)「関屋」。石山寺に向かう源氏の一行と京へ上る空蝉の一行がすれ違うこととなる場面が鮮やかである。
4.森田たま/もめん随筆(新潮社)
先日読んだ対談集『エレガンスの極意』(五木寛之聞き手、扶桑社)の岸恵子との対談中で五木寛之が森田たまについて触れていた。それで今回この『もめん随筆』を読んだのだが、非常に心地よい文章だった。芥川龍之介、内田百閒のエピソードも面白かった。
以下、印象に残った点(場面)三つ。(一)著者が娘道成寺の三味線を聴いた思い出が語られる「秋の匂ひ」。(二)父親の教育とこたつの思い出が語られる「ポオの思いで」。(三)東京に住んでいる時の隣人とその飼い犬の思い出が記された「十三夜」。
〈関連記事 『エレガンスの極意』を読んだ記録を含む記事〉
5.一橋文哉著/闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相(新潮社、1996年)
十年余にわたりグリコ・森永事件を追ってきた著者による著作。関係者への取材、膨大な資料に基づき、「かい人21面相」に迫る。
力作だと思った。こういった本を読むと、自分は随分不安定な社会に住んでいるのだなと感じる。
〈参考文献〉
五木寛之、冴木彩乃聞き手 岸惠子、阿川佐和子、宮部みゆき述/エレガンスの極意‐風のCafe(扶桑社)
(敬称略)
(上の五冊及び参考文献はサピエ図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
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