令和5年7月1日から7日までの期間に、次の10冊を読み終えた。8,9を除く八冊はkindle版をiPhoneのVoiceOver機能で聴く。
1.平田周三著/[明治150周年記念] 名著から問題を読み解く! 明治から日本の未来を考える (4) 明治人物誌[4](インプレス、2018年)
2.道尾秀介著/球体の蛇(KADOKAWA、2013年)
3.五井野正、池田整治、増川いづみ、滝沢泰平著/今、知らなければいけない重大な真実を語るメジャーな人々 東京・日比谷公会堂での講演からvol.1(ヒカルランド、2020年)
4.岡倉天心著、大久保喬樹訳/新訳 茶の本(KADOKAWA、2014年)
5. 九鬼周造著/「いき」の構造(岩波書店、2013年)
6.西森マリー著/ディープステートの真実 日本人が絶対知らない! アメリカ大統領選の闇(秀和システム、2020年)
7.井上智洋著/AI時代の新・ベーシック・インカム論(光文社、2018年)
8.サム・ボーン著、加賀山卓朗訳/アトラスの使徒 上巻(ビレッジブックス、2008年)
9.サム・ボーン著、加賀山卓朗訳/アトラスの使徒 下巻(ビレッジブックス、2008年)
10.市川裕著/ユダヤ人とユダヤ教(岩波書店、2019年)
〈感想、メモ〉
1.平田周三著/[明治150周年記念] 名著から問題を読み解く! 明治から日本の未来を考える (4) 明治人物誌[4](インプレス、2018年)
明治時代に日本が抱えていた問題は原題にも共通するという考えから、明治に関する著作を読み解いていくというシリーズの一冊である。西周に関心があり、今回読むことにした。
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西周のパートでは清水多吉の『兵馬権はいずこにありや』の縮約が掲載される。
2.道尾秀介著/球体の蛇(KADOKAWA、2013年)
長編小説。主人公の友彦は幼いころ、幼馴染の年上の女性に惹かれていた。その女性はキャンプ場で大やけどを負い、その後に亡くなることとなる。高校生の友彦は、シロアリ駆除のバイトをしていたが、その頃、憧れていた幼馴染と似た雰囲気の女性と出会う。
以上は前半のあらすじ。この小説は主人公友彦の語りによって進められる。主人公が何をどのように認識し、そこから何を感じ、考えていくのかが綴られていく。
3.五井野正、池田整治、増川いづみ、滝沢泰平著/今、知らなければいけない重大な真実を語るメジャーな人々 東京・日比谷公会堂での講演からvol.1(ヒカルランド、2020年)
以下、印象に残った部分。(1)池田整治の講演の中の「世界195カ国中、塩素で水道を消毒しているのは日本だけ」(第2章の中の節)という指摘。ここでは、1947年の水道法の存在が指摘される。また、塩素とメタン系農薬の合成により生じるトリハロメタンの危険性についても語られる。(2)増川いづみの講演におけるグルタミン酸の危険性の指摘。味の素とサールの提携について語られる。
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4.岡倉天心著、大久保喬樹訳/新訳 茶の本(KADOKAWA、2014年)
『茶の本』全文と『東洋の理想』の一部、解説、評伝が収録される。
天心はアメリカを中心とした活動を始め、ボストン美術館での仕事とともに「自分の理想とする伝統東洋文明のありかた(訳者によるまえがき内の表現)」を発信することに尽力した。『茶の本』はその成果である英文著作の中の一冊。
『茶の本』第六章の「花」の文章が面白く感じられた。
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5. 九鬼周造著/「いき」の構造(岩波書店、2013年)
『「いき」の構造』のほか、『風流に関する一考察』と『情緒の系図』が収められる。解説は多田道太郎。
以前読んだ丸山眞男の著作である『日本の思想』(岩波書店)において、この『「いき」の構造』は、観念の構造の解明の成功例として挙げられている(「Ⅰ 日本の思想」の「日本における思想的座標軸の欠如」内)。
〈関連記事 『「いき」の構造』が観念の構造を明らかにすることの成功例として挙げられている丸山眞男の著作『日本の思想』を読んだ記録を含む記事〉
著者はこの著書において、「いき」や「風流」などの言葉、また、感情を著す様々な言葉の姿を過去の文献での用例や西欧の哲学の引用により明らかにしていく。
短歌により情緒について考察を進める『情緒の系図』が面白く感じられた。
6.西森マリー著/ディープステートの真実 日本人が絶対知らない! アメリカ大統領選の闇(秀和システム、2020年)
「まえがき」において、著者は、ディープ・ステイトを(以下引用)「陰で政策(特に外交政策)を牛耳る闇の支配層」のこと(引用終わり)であるとしている。
上で定義されたディープステートの行動原理の一つを一言で表しているかのようなボードレールの言葉がエピグラフとして掲げられている。
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再読。今回はヴィクトリア・ニューランドについて書かれた(語られた)部分が印象に残る。特に、巻末に収録された副島隆彦との対談で副島の語るエピソードは強烈であった。ニューランドが2014年にモスクワに飛び、プーチン(本書内では「プーティン」と表記される)との会見を要求。その際にウクライナで彼女たちが行っていることを邪魔せぬよう求めた(本書の中で紹介される彼女の発言内容は冒涜的な言葉を含む激烈なもの)。プーチンには会うことはできなかったとのことである。
7.井上智洋著/AI時代の新・ベーシック・インカム論(光文社、2018年)
ベーシック・インカムの歴史、その可能性などについて書かれた書籍。本編も興味を持って読んだが、各章のエピグラフも印象的だった。ケインズや隆慶一郎、井原西鶴の文章などが掲げられており、今後の読書の参考となった。
また、リバタリアンについて書かれた部分が記憶に残る(第五章)。「(以下引用)日本では、リバタリアニズムという思想の輸入に失敗しており、アメリカとは違って筋金入りのリバタリアンがほとんど存在しない(引用終わり)」とある。著者が自らをリバタリアンとしているのも興味深い。
8.サム・ボーン著、加賀山卓朗訳/アトラスの使徒 上巻(ビレッジブックス、2008年)
9.サム・ボーン著、加賀山卓朗訳/アトラスの使徒 下巻(ビレッジブックス、2008年)
以下、あらすじ。新人記者ウィルの妻が失踪する。彼のもとには謎のメッセージが届く。ウィルは協力者の力を借りながら、妻の行方を追う。以上、あらすじ。
長編サスペンス小説。著者によるあとがきが作品の背景の理解の助けとなり、良かった。
〈関連記事 『アトラスの使徒』の訳者加賀山卓朗による翻訳、ジョン・ル・カレの『ナイロビの蜂』の上下巻を読んだ記録を含む記事〉
(1)上巻を読んだ記録を含む記事
(2)下巻を読んだ記録を含む記事
10.市川裕著/ユダヤ人とユダヤ教(岩波書店、2019年)
以下の二点が印象に残った。(一)コンヴェルソについての記述。第一章の第二節の中の「新キリスト教徒の再改宗」において触れられる、オランダに辿り着いたコンヴェルソの様子が特に興味深く感じられた。(二)マイモニデスについての部分。この世のすべての人間は「(以下引用)神の教えを実践することで「完全性」を達成する責務(引用終わり)」を負っているのだというマイモニデスの考えは興味深く感じられた。
〈関連記事 マイモニデスの引用のある烏賀陽正弘の著作『ユダヤ人の「考える力」 苦難に耐え、克服する三千年の知恵』を読んだ記録を含む記事〉
(敬称略)
(『アトラスの使徒』の上下巻はサピエ図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
(上の画像はAdobe Firefly)により生成されました。令和六年九月四日加筆
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