令和5年2月12日、谷恒夫の『喜望峰』を読み終えた。kindleをiPhoneのVoiceOverで聴く。
長編小説。主人公は白雲丸(船齢12年目の老朽船)の乗組員、一等航海士の稲村雅史。物語は白雲丸が運航予定の変更(本来、白雲丸はローレンス・マルケス(当時の地名)にあと五日停泊する予定であったのだが、急遽出帆を要請された)と巨大な木箱の積載を強いられるところから始まる。
出航の準備をする白雲丸を眺めながら、稲村は天候の崩れることを予想する。「(以下引用)南の空低く、黒雲がたむろしている。低気圧の前触れのような、不穏な雲だ。おそらく、南ア沿岸は時化るだろう。(引用終わり)」
その後、必要書類(船積指図書)の不可解な紛失などが起こり、稲村は不吉な予感を覚える。
モザンヴィック(作中での表記)、南アフリカを舞台に、人種差別、国際政治が絡み合ったストーリーが展開する。
この『喜望峰』は谷恒生の二作品デビューの際の一作品。もう一つの作品は『マラッカ海峡』。
〈谷恒生のもう一つのデビュー作品『マラッカ海峡』を読んだことについての記述のある過去記事〉
谷恒生著/喜望峰(集英社、2006年電子書籍発行)
(敬称略)
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