令和5年1月27日、松本清張の『赤い氷河期』を読み終えた。(書かれた当時からの)近未来を舞台にしたサスペンス長編。非常に面白かった。
21世紀、エイズが猛威をふるう世界。主人公はIHC(国際健康管理委員会)調査局に勤務する山上。IHCはヨーロッパ各国が作った基金によりチューリッヒに設立された組織である。
エイズ患者は1億5千万人に迫るという勢いであった。なぜそのようにエイズが蔓延しているのか。山上の思索、そして謎の男福光の暗躍が物語の軸となる。(参考ページ1)
物語のサスペンス性のほかにも興味深い点は多くあった。一つは古典的な文学作品がこの作中引用されること。例えば、森鴎外、カミュ。
もう一つ、ヨーロッパの風物が描かれていることもこの作品の魅力的な部分であった。この小説にはアンスバッハ、リューベックなどが舞台として出てくる。
巻末に岡庭昇の解説が付される。
参考ページ2及び参考文献によると、本作は週刊新潮1988年1月7日号から1989年3月9日号に連載された『赤い氷河 ゴモラに死を』に加筆訂正がなされてのちに刊行されたものであるとのこと。
松本清張著/赤い氷河期(新潮社、1991年)
〈参考文献〉
桜井秀勲著/誰も見ていない書斎の松本清張(きずな出版、2020年)
〈参考ページ〉
登場人物の名前などの漢字表記や作品情報については以下のページを参考にさせていただきました。
(敬称略)
(『赤い氷河期』はサピエ図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
(上の画像はAI PICASSOにより生成されました。2024年8月6日加筆)
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