令和5年10月1日から15日までの期間に次の本を読み終えた。3、5、6、9、10、12の6冊はkindle版をiPhoneのVoiceOver機能で聴いた。
1.川崎大助著/日本のロック名盤ベスト100(講談社、2015年)
2.高田崇史著/白蛇の洗礼 毒草師(朝日新聞出版、2008年)
3.鈴木董著/オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家(講談社、2018年)
4.中見利男著/家康の暗号(角川春樹事務所、2012年)
5.今野敏著/天網 TOKAGE2 特殊遊撃捜査隊(朝日新聞出版、2012年)
6.鈴木大拙著/華厳の研究(KADOKAWA、2020年)
7.小西聖一著、酒寄雅志監修/聖武天皇と行基 大仏にかけた願い(理論社、2004年)
8.ブラム・ストーカー著菊地秀行訳/ドラキュラ(講談社、1999年)
9.馬渕睦夫、高山正之著/世界を破戒するものたちの正体 日本の覚醒が「グレート・リセット」の脅威に打ち勝つ(徳間書店、2021年)
10.大友信彦著/再起へのタックル ラグビーワールドカップをめぐる終わりなき航海(文蔵BOOKS、2014年)
11.ミシェル・ウエルベック著、中村佳子訳/闘争領域の拡大(角川書店、2004年)
12.中山元著/フーコー入門(筑摩書房、1996年)
13.高橋五郎著/天皇の金塊とヒロシマ原爆(学研、2008年)
14.中村小夜著/昼も夜も彷徨え マイモニデス物語(中央公論新社、2018年)
15.浅田次郎監修/浅田次郎と歩く中山道 『一路』の舞台をたずねて(中央公論新社、2013年)
〈感想、メモ〉
1.川崎大助著/日本のロック名盤ベスト100(講談社、2015年)
「ランキングされたオールタイムベストの名盤リスト(「はじめに」内の表現)」がなぜ日本のロックに存在しないのかという疑問からこの本のアイデアが生まれたのだと著者は記している。
先日、元はっぴいえんどの鈴木茂の自伝や元ブルーハーツと歌人・穂村弘の甲本ヒロトの対談を読み、この2バンドに関する批評を読みたく、この本を読み始める(亮バンドのレコードが邦名盤リストに無い事はないだろうと考えた)。
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本編(「第1部 日本のロック名盤ベスト100」)も興味深いものであったが、それらを選ぶ基準が語られる部分が面白かった「どのように順位を決めたか」。
2.高田崇史著/白蛇の洗礼 毒草師(朝日新聞出版、2008年)
茶会で起こる変死事件が描かれる長編推理小説。登場人物たちにより語られる歴史(千利休に関するものなど)エピソードが面白かった。参考図書のリストも付されており、勉強になる。
プロローグのエピグラフには藤原家隆の歌が選ばれている(この歌に関しては岡倉天心の『茶の本』や千宗屋の著作『茶』でも触れられている)。
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3.鈴木董著/オスマン帝国の解体 文化世界と国民国家(講談社、2018年)
小笠原弘幸の『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』(中央公論新社)を読んだ際、鈴木正の表現が引用されていた部分が印象的であった。そのこともあり、数年ぶりに再読する。
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「第一部 民族国家と文化世界」(第一章~第三章)、「第二部 イスラム世界」(第四章~第六章)、「第三部 オスマン帝国」(第七章~第十二章)の三部から成る。
4.中見利男著/家康の暗号(角川春樹事務所、2012年)
関ケ原後の時代を舞台とした歴史小説。豊臣秀頼の武芸指南役を務めていた男が残虐な拷問により失明する。そののち彼は禅僧となり、豊臣家を打倒するために動く。
5.今野敏著/天網 TOKAGE2 特殊遊撃捜査隊(朝日新聞出版、2012年)
TOKAGEシリーズの第二作。本作は東日新報東京本社の社会部の記者である湯浅武彦の様子の描写から始まる。記者の登場場面はその後も多い。事件に関する情報を様々な立場の人間んがどのように扱うのかを興味を持って読んだ。
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6.鈴木大拙著/華厳の研究(KADOKAWA、2020年)
(以下、「訳者あとがき」からの引用)本書は鈴木大拙先生英文『禅論文集』第三巻の最初の四つの論文をその内容としている。(引用終わり)
訳者は杉平顗智。解説は安藤礼二。
この本は、「禅から華厳経へ」、「華厳経、菩薩理想及び仏陀」、「菩薩の住処」、「華厳経における発菩提心」の四篇から成る。
第二篇の中の「四 菩薩と声聞」が印象に残った。
7.小西聖一著、酒寄雅志監修/聖武天皇と行基 大仏にかけた願い(理論社、2004年)
聖武天皇、行基、光明皇后といった人々について解説される。光明皇后が「大仏誕生の、陰の主役(本文中表現)」と語られているのが記憶に残る。
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また、この本の中では藤原広嗣の乱の際の聖武天皇の行動はクイズになっていて、印象に残る。
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8.ブラム・ストーカー著菊地秀行訳/ドラキュラ(講談社、1999年)
菊地秀幸の翻案、翻訳による『ドラキュラ』である。訳者は栄華のドラキュラに1959年に原作よりも先に触れ(「あとがき」による)、「ショック」を受けたとのことである。その映画「吸血鬼ドラキュラ」(1958年)のクリストファー・リー演ずるドラキュラが格好良かったため、この翻訳ではそのビジュアル・イメージを以て描かれているらしい。
港町ホイットビーの描写が興味深かった。
9.馬渕睦夫、高山正之著/世界を破戒するものたちの正体 日本の覚醒が「グレート・リセット」の脅威に打ち勝つ(徳間書店、2021年)
馬渕睦夫と高山正之の対談本。馬渕睦夫によるプロローグの日付は「令和三年二月吉日」となっている。
「アメリカの現実」、「歴史は語り繰り返す」、「縛られる日本」、「日本が覚醒する日」の四つの章から成る。
第四章の最初の節である「トランプの退任演説」が記憶に残る。
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10.大友信彦著/再起へのタックル ラグビーワールドカップをめぐる終わりなき航海(文蔵BOOKS、2014年)
1から5章は「熱帯夜の閃光 増保輝則の章」、「覚醒から熟成 元木由記雄の章」、「闇夜の船長 薫田真広の章」、「スピリット・オブ・ファイヤー 村田亙の章」、「チャージ・アゲイン 中村航の章」と各章に一人ずつ選手の名があり、6つ目の章は「終わりなき航海」と題される。
第四章の中で中村航と著者が中村の読んでいた池波正太郎の『真田太平記』新潮文庫版について会話する場面があり、印象的だった。
ほか、第一章において、平尾誠二による増保の「(以下引用)トライ以外の局面で仕事ができる(引用終わり)」評価が記されており、印象に残る。
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11.ミシェル・ウエルベック著、中村佳子訳/闘争領域の拡大(角川書店、2004年)
「訳者あとがき」によると、『闘争領域の拡大(原題:Extension du domaine de la lutte)』の初版は1994年であるとのこと。
主人公の一人称の語りで物語が進行する。主人公の職場は13区にあると語られる。その周囲の描写が殺伐としていて驚く。
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田中芳樹の長編小説『巴里・妖都変』(光文社)を読んだ記録を含む記事
ドラ・トーザンの『パリジェンヌのパリ20区散歩』(河出書房新社)を読んだ記録を含む記事
12.中山元著/フーコー入門(筑摩書房、1996年)
この数年、ミシェル・フーコーの問題意識の重要性を感じさせられることが多い。フーコーの用いていた概念、彼の言葉が様々な本で引用されていて、それらに触れる頻度が高くなっているように思われる。最近読んだ中で印象的だったのは、國部克彦の著作『ワクチンの境界』(アメージング出版)での引用(中でも本の冒頭に置かれているフーコーの講義録の中の言葉(『ミシェル・フーコー講義集成第11巻 主体の解釈学』(筑摩書房)の中のものとのこと))である。「生権力」という概念は2020年代の現在、さらに輪郭の明確なものになったように思われる。
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中山元による『フーコー入門』では、上記講義録『主体の解釈学』は「第7章 実存の美学」の中の「道徳的な自己の吟味」において引用される。
13.高橋五郎著/天皇の金塊とヒロシマ原爆(学研、2008年)
ユダヤ系スペイン人で第二次大戦時のスパイであるアンヘル・アルカッサル・デ・ベラスコ(1909~2002)と交流のある著者による書籍。
ウィンザー侯の拉致を目的とした作戦にベラスコが関係していたというエピソードが興味深く感じられた(「序章」)。
14.中村小夜著/昼も夜も彷徨え マイモニデス物語(中央公論新社、2018年)
「中世最大のユダヤ教の思想家であり、哲学者であり、一流のタルムード学者(「あとがき」内表現)」マイモニデスを主人公とした長編歴史小説。
サラーフ・アル・ディーン、カーディ・ファーディルといった同時代人もいきいきと描かれており、興味深く読んだ。
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市川裕著『ユダヤ人とユダヤ教』(岩波書店)を読んだ記録を含む記事
マイモニデスの言葉の引用が含まれる烏賀陽正弘著『ユダヤ人の考え方』(PHP研究所)を読んだ記録を含む記事
15.浅田次郎監修/浅田次郎と歩く中山道 『一路』の舞台をたずねて(中央公論新社、2013年)
著者が大名行列についての作品を書こうと考え、舞台として選んだのが中山道であったとのこと(「巻頭エッセイ」による)。その理由として、往時の姿が残っているからというものが挙げられている。
時代小説の中の中山道の様子は確かに印象的であるように思う。先日読んだ千野隆司著『麒麟越え』でも、中山道の宿場の本庄宿が描かれる部分が記憶に残っている。
〈関連記事〉
この『浅田次郎と歩く中山道』では、蕎麦雑炊など、中山道の食に関する部分が興味深かった。
(以上、(基本的に)敬称略)
(『日本のロック名盤ベスト100』、『白蛇の洗礼』、『家康の暗号』、『聖武天皇と行基』、『ドラキュラ』、『闘争領域の拡大』、『天皇の金塊とヒロシマ原爆』、『昼も夜も彷徨え』『浅田次郎と歩く中山道』はサピエ図書館の点字データで読みました。点訳ボランティアの皆様と関係者の方々に感謝申し上げます。)
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