中西輝政著『アメリカ帝国衰亡論・序説』などを読了

令和5年4月7日から8日の期間、次の四冊を読み終えた。いずれも、kindle版をiPhoneで聴く。『憲法改正に仕掛けられた4つのワナ』と『スペードのクイーン/ベールキン物語』は令和5年4月時点でkindle unlimitedで利用可能。

1.中西輝政著/アメリカ帝国衰亡論・序説(幻冬舎、2017年)

2.苫米地英人著/憲法改正に仕掛けられた4つのワナ[電子版増補](サイゾー、2013年)

3.宵野ゆめ著/グイン・サーガ第132巻 サイロンの晩歌(早川書房、2014年)

4.プーシキン著、望月哲男訳/スペードのクイーン/ベールキン物語(光文社、2015年)

〈覚書〉

1.中西輝政著/アメリカ帝国衰亡論・序説(幻冬舎、2017年)

その著作『大英帝国衰亡論』で知られる中西輝政によるアメリカ衰亡論。英米の経済における思想は、新自由主義が基本であると著者は語る。新自由主義の経済は格差をもたらし、その不満はトランプ現象とつながっていると著者は分析する。

著者は、トランプはオバマの後継者であると語る。内向きのベクトルが両者に共通したものだ、という。

誰が大統領になろうとも、長期的に見た場合、アメリカは衰亡の路を歩み、現在はまだ「終わりの始まり(本文中の表現)」であり、それがゆえに本書は序説とされているとのことである。

数年ぶりに再読した。読み終えて、アメリカにおける宗教の状況についてもっと知りたいと思った。

2.苫米地英人著/憲法改正に仕掛けられた4つのワナ[電子版増補](サイゾー、2013年)

自民党の憲法改正草案の危険性に警鐘を鳴らす本である。以前、法学者の長谷部恭男の著作(本作同様自民党の憲法改正草案を検討する書籍)を読んだ時にも「緊急事態条項」の恐ろしさが感じられたことを記憶している。

〈長谷部恭男の著作を読んだ記録を含む記事〉

R・F・ヴァイツゼッカー著『荒れ野の40年』などを読了

長谷部恭男、石田勇治著『ナチスの「手口」と緊急事態条項』などを読了

『憲法改正に仕掛けられた4つのワナ』の電子版には、紙の本の内容に加えて、巻末に2022年に行われた著者へのインタビューが収録される。2018年に自民党は改憲における優先的な検討項目について記した「たたき台素案」をネットに掲載する。そして、2022年には、「(以下引用)このたたき台素案では触れられていなかった改正案九十九条の緊急時における内閣の立法権などを示唆する解説資料など(引用終わり)」が公表された。それら状況の推移を受けて行われたインタビューである。ロシアとウクライナにおける日本国政府のふるまい(防弾チョッキの提供が例として挙げられている)に対し、国際法に照らし、それがどのように他国に解釈されるのかということに著者は注意を促しており、印象に残る。

3.宵野ゆめ著/グイン・サーガ第132巻 サイロンの晩歌(早川書房、2014年)

栗本薫没後、五代ゆう、宵野ゆめらにより書き継がれるグイン・サーガの本編132巻。

この巻の舞台は、黒死病の災厄からの復興途上にあるサイロンである。ケイロニア王グイン、グインの愛妾ヴァルーサ、宰相ハゾス、トール将軍、盲目のローデス選帝侯ロベルト、薬師ニーリウスらが登場する。

王の公務を行う執務室の様子、王であるグインの書類仕事の迅速さの描写が面白く思われた。

4.プーシキン著、望月哲男訳/スペードのクイーン/ベールキン物語(光文社、2015年)

表題作「スペードのクイーン」、5つの短編(「射弾」、「吹雪」、「葬儀屋」、「駅長」、「百姓令嬢」)から成る「ベールキン物語」が収録される。

「スペードのクイーン」はカードの勝負で必ず勝てる秘法を知るという老婆からその秘密の法を聞き出そうとする青年の物語。カバラ数秘術が織り込まれた作品なのではないかという研究もあるという作品である。サンジェルマンの名前も登場し、全体にミステリアスな雰囲気が漂う。

「ベールキン物語」の5作品の中では、「百姓令嬢」が平和なストーリーで良かった。昔の交通システムにおける駅(交通手段は馬車)の駅長と娘の運命が描かれる「駅長」もかなり印象の強い小説。主要登場人物の駅長にとって悲劇的なストーリーも印象的であるし、登場する軽騎兵の傍若無人な行動も読んでいて嫌悪感を感じるほどである。

(敬称略)

(上の画像はLeonardo.AIにより生成されました。令和六年九月二十六日加筆)

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