令和5年2月22日、中村真一郎の『文章読本』を読み終えた。kindleをiPhoneのVoiceOver機能で聴く。
この本は「口語文の成立」、「口語文の完成」、「口語文の進展」、「口語文の改革」という4つのパートから成る。
「あとがき」にこれらの文章の書かれた理由が書かれている。「(以下引用)現在、私たちが普通に使っている文章後、つまり口語文というものは、非常に流動的であり、又、混乱を極めている、と一般に云われています。(引用終わり)」
上のような認識が示されたうえで、混乱の解決の責任が課せられているのが文学者であるので、自らも文学者である著者がこの『文章読本』を書いたのだということが語られる。
二葉亭四迷、森鴎外、夏目漱石、幸田露伴、国木田独歩、武者小路実篤、永井荷風、島崎藤村、谷崎潤一郎、横光利一らの文章が実例として挙げられ、著者がそれらを分析、解説する。
言文一致、自然主義、白樺派といった文学者たちのスローガンや動きについてもこの実例集を通じて知ることができる。
この本は、読者が文章についての悩みを持っていると想定して書かれているという側面を持つので、著者は読者が抱えているであろう問題に沿って論を展開している。
口語文の様々な段階を知ることもでき、勉強になった。また、挙げられた文学者たちの文章をただ楽しむという読みかたもあろうと思う。
著者中村 真一郎(なかむら しんいちろう、1918~1997)は小説家、評論家。(参考ページ)
この『文章読本』は昭和57年に新潮文庫版が刊行された、と巻末にある。
中村真一郎著/文章読本(新潮社、2002年電子版発行)
〈参考ページ〉
〈関連記事‐中村真一郎の仕事についての考察などが含まれる『再会と別離』を読んだことについての記事〉
(敬称略)
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